【至福の料理】
食で大切なのは美味しいこと、これは当たり前。
その上で日本食(和食)では、四季折々の彩や器をはじめとする美しさが重視されます。茶懐石のように内面や精神面を重視する『静』の至福が求められます。
一方、中国における「至福の料理」は、アクティブに生きていくためのパワーの源として料理を捉えます。いわば『動』の料理なのです。
現代人の中には、美味しさよりも手軽さを日々の生活に求めることが多々あります。そのため化学製品の味付けに慣れてしまったという悲しい現実があります。
コンビニ弁当やファストフード食を、美味しいと感じて食べる人もいるでしょうが、手軽で安価な商品を提供するために数十種類の化学製品が使われているとなると、どうでしょう。
いくら美味しいと感じたとしても、それだけでは至福の料理とは言えません。
なぜなら、読んで字の如く「福に至る料理」=「食べて幸せになる料理」でなければならないからです。
幸せの感じ方は人それぞれですが、万国共通の幸せの基本は健康です。美味しくて健康でいられる料理こそが「至福の料理」なのです。
【食事は結果】
中国ではことのほか食事を大切にしています。「三度の飯より大切なのは食事」という言葉があるほどです。
日本人は「生きるために食べている」ですが、中国人は「食べるために生きている」といってもいいでしょう。
中国語では、「你好(こんにちは)」よりも「吃飯了(ご飯食べた?)」という挨拶の方が親しまれています。人の身体は、口から入れたもので形成されています。
わかっているつもりでも、忙しい生活の中では、いい加減な食事をしていることの方が多いものです。
手、足、脳、髪…、それらが日々の食事から作られています。身体の動きや脳の考え方までのすべてが日々の食事による「結果」となっているのです。このことを意識して生活している人はどのくらいいるでしょうか。
【医食同源】
「医食同源」という言葉は、身体に必要とするものは食事から採り、普段食べているものが病気の予防になる「薬と食事は源を同じくす」という考えから来ています。これは日本で作られた言葉です。
中国語では、薬を「飲む」とは言わず「食べる」と表現します。肉も、魚も、野菜も、野辺の草花もすべて薬…といった感じです。
遥か昔から、各素材にどのような効果効能があるのかという研鑽により、その「薬」を如何に美味しく、栄養素を失わずに食べるかが、中国料理の基本となっています。
【中国五術のひとつ】
古代中国の春秋戦国時代では、医師を4つのランクに分け、最高ランクは「食医」と呼ばれ、皇帝の食事管理や体調管理を任されるほど、医食同源に精通していました。
医と食が切っても切れない関係であることを証明しているかのようです。
日本では最近になって「食育」という言葉が定着しつつありますが、中国では二千年も前から「食学」という言葉が存在しています。
中国文化の基本には、中国五術として知られる『命・卜・相・医・山』という考え方があり、食事は「医」に分類されます。「中国医学は毎日の食事から」ということです。
この考え方の基本が記されたのは、キリスト誕生の頃に中国古典「黄帝内経」の中の「陰陽五行説」に載っています。「未病」という言葉も同じです。
中国料理は「美味しい」かつ、「未病」のための食事として発展してきました。「未然に病気になることを防ぐ」ことは幸福への第一歩。美味しい食事も幸福への第一歩。
未病と美味しさの2つの追求こそが、風水発祥の地・中国料理の真骨頂なのです。